六月二十九日(日)、比良明王谷での沢登り教室に参加した。出発前、人生初の沢登りということもあって、夏場でも寒いのだろうか、足首までしか川に浸からないのだろうか、はたまた川で泳ぐこともあるのだろうか…と少しの不安と期待に胸が膨らんだ。受講者は私たちを含め六名で、お見受けするところ沢登り経験豊富な方ばかり。これは初心者向けではなかったのかもしれないと、一抹の不安を抱えていると、「若者よ、よく来たな」と言わんばかりに講師の方々に笑顔で迎えられ一安心した。装備一式を貸与して頂き、いざ明王谷へ。
沢に踏み込んだ一歩目、想像以上の水の冷たさと、透き通る水のきれいさに驚いた。この水が琵琶湖に入り近畿住民の飲み水になっているかと思うと、地球の偉大さ、森の水の浄化作用の偉大さを感じた。そんなことを考えていると、沢をガサガサ歩いていたのが、川を荒さないように…とそっと歩くようになっていた。滑らない岩の歩き方、ロープワークを学びながら、様々な滝場を乗り越えていく。小滝に差し掛かったところで、スリル満点の壁を登り、懸垂下降!「自己ビレーしているから落ちないよ、大丈夫!」と言われたものの、何分初めてのことなので、装備の力を信用しきれず、のっそりとびくびくしながら下降する。懸垂下降時、足を踏み外し、宙づりになって初めて装備の有難味に気付いた。難所を乗り越えると穏やかな沢となり、周りの景色を楽しむ余裕が生まれた。川にさす木漏れ日、水の滴る苔、せせらぎの音、全てが神秘的で美しかった。純粋に、もっと多くの人にこの景色を生で見てほしいと思った。
近年、登山ブームとは言われているものの、二〇代の人に山や沢で会う機会は少ない。きっと、危険そう、装備を持っていないからというのが主な理由だろう。今回お世話になった兵庫県山岳連盟ではこのような素敵な機会を準備してくれている。多くの人が利用して、自然の美しさを実感して欲しいと思った。
記録:N.K